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漢字にも「方言」

 話し言葉に方言があるように、漢字にも「地域文字」がある。早稲田大教授(日本語学)の笹原宏之さん(41)は高校時代から、各地の文献を当たって100字以上を拾い出し、近著「国字の位相と展開」(三省堂)でまとめた。日本で作られた和製漢字「国字」が大部分を占め、「人々と文字の格闘の跡が読み取れる」という。

 国字は1万近くある。例えば「辻」は、道を表すシンニョウと交差する意味の「十」の組み合わせだ。

 江戸中期の儒学者、新井白石は「日本で作られ、漢籍には見られず、訓しかない字」と定義した。「峠」「畑」「働」などが有名で、地名に地域特有の文字があることも、江戸時代から知られていた。

 地域文字は、新潟県や秋田県八郎潟周辺で見られる「●(かた)」、山形県鶴岡市で使われる「寉(つる)」をはじめ、名古屋市の「杁(いり)」や京都市の「椥(なぎ)」、茨城県の「圷(あくつ)」など地名や人名として残っている。長崎県壱岐の「■(しめ)」は室町時代に編まれた中央の辞書に載っていたが、いまは壱岐だけで見られる。

 自分の名前の「笹(ささ)」が国字と知ったのは小学校低学年。高校時代から、江戸時代の異体字研究書や戦前の漢和辞典、電話帳からも国字を拾っては、世界最大の漢和辞典として知られる諸橋轍次の「大漢和辞典」にあるかどうか調べてきた。

 情報伝達の効率だけを考えれば、地域文字は消えるはずだが、しぶとく生き残った。「文字が文化そのものだからです。生活に結びついた文字はただの道具でなく、雰囲気や背景の文化を伝えます」

 文字に地域差が出るのは、漢字に限らない。

 いま、笹原さんが注目するのは東京・六本木に3月末、オープンした東京ミッドタウンだ。「店名など横文字がほとんどで、ある種の雰囲気を出している」という。

Fonte: Asahi Shinbun